五月山動物園 飼育員さんインタビュー

2019年3月某日、飼育員さんへのインタビューをさせていただきました。
ワラビー邸がリニューアルされ、コウくんとユキちゃんが同居しているころのお話です。


―――本日はよろしくお願いします。まずはライトな質問から…。
ベンチやポストの上にあるウォンバットの石像のモデルは誰なんでしょうか?
誰かひとりというわけではないのですか?

瀬島:あれね、誰かひとりではないと思います。
確かね、オーストラリアから直接資料みたいなのをもらって、それに基づいて。
誰かってわけじゃなかったと思います。

―――そうでしたか、ワンダーさん似なのでワンダーさんがモデルなのかと思っていました。

瀬島:ワンダー似でね。そうですよね。たまたまなんちゃうかなと思います。

―――皆さまのウォンバットの第一印象はどうでしたか?
すでにウォンバットとのお付き合いも長いので、難しいと思いますが…。
まず瀬島さんから…まずはもうお仕事で、ですか?

瀬島:僕もともと池田市民なんですよ。
たまたま父がそういうのに関係してて、ウォンバットが来るぞというのは知ってたんですよ、実は。
あれは平成2年か…やから僕…何歳…?(笑)


瀬島氏

―――1990年なので…(いろいろ計算して)瀬島さんが高校生くらいでしょうか?

瀬島:そう、それで来た時に見に来てます。

―――ワイン・ワンダー・ティアをその頃からご覧になってたということですね。

瀬島:そうなんですよ。外から見てました。

―――凄いですね!

瀬島:今思ったらまだその時は知らなかった先輩方がいてましたから。
その方達が後に直属の上司になった人でしたけど(笑)

―――その後、新しいウォンバットをたくさん呼ばれるお立場になられるとは思わず、ですよね(笑)

瀬島:そうですね(笑)

―――高岡さんはちなみに第一印象は

高岡:えーっと、そうですね、初めに見たのが専門学校の時の実習でこちら来させていただいたときですね。

―――ええー!

高岡:ワイン・ワンダー、それからティアという個体が居たんですけど、まぁ作業させて頂いて、筋肉質な動物だなという印象を受けました。
実際仕事で携わるようになって捕まえる時ですとか、体重測ってる時とか重いですし、ゴムまりのような印象があります。

―――なるほど。ちなみに外から見てるとワインくんは凄く高岡さんとお友達みたいに見えて、多分お付き合いの長さもあるのかなと勝手に思っているのですが(笑)

高岡:そうですね(笑)


高岡氏

―――ちなみに何年にこちらにいらっしゃったんですか?

高岡:えーと、18年?19年? あ、4月で19年目になりますね。

―――2001年くらいからでしょうか?

高岡:そうですね、それくらいからだったと思います。

―――ありがとうございます。

―――遠藤さんは何年でしょうか?

遠藤:12年目かそれくらいかと…

―――2007年くらいでしょうか。フクちゃんと同期ですね(笑)


遠藤氏

一同:フクちゃんと同期(笑)

遠藤:同期ですかね。入社してちょっとしてからフクが来てるから…

―――そうでしたか。遠藤さんにとってウォンバットの第一印象はどんな感じだったのでしょうか?

遠藤:第一印象…は、何考えてるかわからん動物やなと。

一同:(笑)

遠藤:みんな性格が違いますので…それで…何考えてるか。

一同:(笑)

―――フクちゃんが遠藤さんに「撫でて撫でて」ってくるのが、外から見てるとすごく好きなんですが…。

遠藤:甘えには来てるんやろなというのは分かるんですけどね…一緒に入れるか、入ってええのかわからんとこなんですけど、そのラインが不思議な感じですね。

―――不思議ですよね。

遠藤:マルはマルで…変わっちゃいましたねぇ。

―――最近よくマルちゃんに対して「躾」をされてますよね。
以前瀬島さんにお伺いしたのですが、「五月山動物園の飼育員の皆さんは動物との信頼関係を持つんだけど、ナメられていないのが素晴らしい」と仰ってて、やはりそういうことなのかなと。
甘やかすだけじゃなくて、マルちゃんが悪いことしたら「アカンで」みたいなことをされてて。
そういうのって大事なんですよね?

遠藤:そのまま放っておくと、攻撃的な態度が続きそうなので、ある程度は自分の方が上という部分を見せないと、というのはありますね。

―――やはりそうなんですね。そういう関係って難しそうですね。
信頼もされないといけないし、ちゃんと上下関係もないとダメなんですね。

遠藤:そうですね。

―――ちなみに皆さま、他園のウォンバットってご覧になったりとか、気になられたりするんでしょうか?

遠藤:気にはなるけど…休めない…。

一同:(笑)

―――そうですよね、私達のように気軽に行けるお立場ではないので…。

遠藤:なかなか…遠方となると…。

―――そうですよね。ちなみに気になるのは誰ですか?

遠藤:やはり茶臼山のウォンバットの動きは気になりますね。
動画とかはSNSでチェックさせていただいて見たりはしますけど、実際、生で見ると絶対違うでしょうから…。

―――ではどちらかというと、「いきもの」「かわいい」ではなく飼育員のプロとしてちょっと気になってらっしゃるということでしょうか?

高岡:まぁ向こうのウォンバットの遊び道具とか、ああいうのは僕らもやっぱり見ますしね。
やはりエンリッチメントに関しては、どういうものを使っているかという部分では気にしますね。
うちは五月山のカラーにあった遊び道具というか、あまり人工物っていうのは…野生動物が手にしている
環境とかそのまま見ていただくということで、あまり人工物は積極的には取り入れてないんですけど…。
その中でどれだけできることがあるのかな、というのがありますね。

―――今回特にリニューアルされたワラビー舎の狙いっていうのは、コウくん・ユキちゃんがのびのびとできる環境を整えるという…

瀬島:そうですね。最終的にはワラビーとの混合飼育に持っていきたいなと思ったんで…生息域が自然に分けられるように、ああいうのを取り入れてはみたんですが。
どうなっていくのか、今後様子を見ながらの勉強になると思うんですね。

―――これからまだまだあの場所を「育てていく」という感じですね。

瀬島:そうですね。

―――私達もコウくんがワラビー舎を駆け回っているのを見たのですが、まるで野生のウォンバットを見るような感動がありました。
ああいういつもと違う動きっていうのは、動物たちも嬉しいのかな、と。

瀬島:行動を引き出すっていう意味でね、ああいうカタチのがいいのかもしれないですね。
色んな事が出来るようにしてあげた方がね。

―――なるほど。

―――ところでワンダーさんについてですが、以前どういう形にするか決まっていないとお聞きしていましたが…。

瀬島:ああ、あれね。もう実は、はく製をお願いしてまして。
はく製と骨格の両取りにしようかなと。

―――ではいずれギャラリーの方で再会できるということですね。

瀬島:ええ、そうですね。

―――ところで10年くらい前のウォンバットファンの方のブログで、ワインくんの部屋にワンダーさんを入れて一緒にして、
飼育員さんがビデオを撮ってるというウォンバットてれびの写真があったのですが、一時的な同居も晩年あったのでしょうか?

高岡瀬島:10年前ですか?

―――ペアリングとかだったのでしょうか?

高岡:えーっと、1回やりましたね。最後の…。

瀬島:やりました、やりました。
そうです、ペアリングです。
色々な組み合わせで試してたんですけど、ワインとワンダーが一番なんやかんや言いながら、元気やし
相性良くない?っていう発想からやったな、あの時。

高岡:そうです、そうです。

―――相性が良いっていうのは、やはり大事なんですね。
ちなみにマルちゃんなんですけど、先日フクちゃんとデートしていたのをお客さんも目撃してたんですけど、うまくいったかどうかはまだわからないですよね?

遠藤:まだわかんないですねー。

瀬島:フクもまだ経験値が浅いんで、何となくちゃんと出来てんのかなというのもあって。

―――ところでフクちゃんですが、ドリームワールドからやってきたというのは、何か理由があったのでしょうか?

瀬島:あれね、経由しただけです。
元々トロワナに居てて、そっからいったん経由して。

―――では、アヤハちゃんも一緒にトロワナからドリームワールドに。

瀬島:そうです。
元々はロンセンストン市と池田市という関わりの中でやってたんですけど、あの時はタスマニア州と、みたいな雰囲気になって。
今回はケリーさんだけのちょっと独断のとこもあったみたいやけど、なんやかんや言いながらちょっと国も色々絡んできて…。
やっぱり段々難しくなってきてますね。

―――年々ハードルも上がっているんですね。

瀬島:そうですね。

―――今回の来日は奇跡に近いですね。KeeperGirlsの頑張りもあって。

瀬島:そうですね。どんどん盛り上がりがある中で、市長と池田市が本気出してくれはったし。
そんでスムーズにいけたんかなと思って。

―――色々あったんだろうなと想像しつつも、外からはスムーズに見えていたんですが、やはり大変だったんですね。

瀬島:色々ありましたよ。
ちょっと途中で1回ダメになるかもって時があって。話なくなっちゃった時あって、怖かったですよ。

―――粘り強く交渉されたということですね。

瀬島:そうですね。

―――コウくんとユキちゃんはデートの兆候とかあったりするんでしょうか?

遠藤:ライブカメラでそういう風なのがあったっていうのは聞きましたけど、でもちょっと、核心迫る部分は映ってなかったので、なんとも…
日中ではそういう傾向は見えないという感じですかね。
上にまたがろうとしても払いのけられるという、まぁそんなくらいの。まだ核心迫るところまでは行ってないと思います。

―――高岡さん、ワインくんですがお掃除してると必ず来ると思うんですが、あれは昔からでしょうか?

高岡:そうですね、やはり箒とか塵取りに他個体の匂いがついてて、排泄物とか、そういうのを嗅いだりしてるんだと思います。
刺激が欲しくてそういうのをしてるんだと思います。

―――外から見ていると「お手伝い」って私達は呼んでいるのですが(笑)

高岡:そうですね、お手伝いに来ますね(笑)

―――以前見たのですが、飼育員さんがお掃除で枯葉を集めるんですけど、それを見事に散らして行くという(笑)
ちょっと大変だろうなと思って見ていました。

一同:(笑)

―――サツキちゃんやサクラちゃんは、ワインくんやワンダーさんに似たような性格だったんでしょうか?

高岡:サツキは、僕たちキーパーが獣舎に入ると「シャーシャー」言ってました。
で、サクラは凄く穴掘りが得意で、放飼場で穴を深く掘ってしまって出てこなかったりということがありました。
穴掘りが好きだったみたいですね。

―――ワインくんが時々獣舎内でワンダー側の扉を揺らしているのですが、何か理由があるのでしょうか?

遠藤:あれは…さっきのパイプ椅子の錆を噛んでるのと同じいうとこやと思いますけどね。

―――歯ごたえがいいとかでしょうか?

遠藤:多分そうやと思いますけど…。

―――フクちゃんのマルはげって、あれは何かでああなったわけではないですよね?来てすぐの写真にもありますし。

瀬島:うん、ありますね。きっとあれはああいうデザインでしょうね。
生活の中でそれを何かこすってるようなクセもないしな?

高岡遠藤:そうですねー…、ないですね。

―――フクちゃんの誕生月はもうわからないですよね?

瀬島:そうですね、野生個体に近いのでわからないです。

―――ファンの間では2/9でいいかってなってます(笑)

瀬島:いいと思います(笑)

―――マルちゃんの発情の見分け方みたいなのは、飼育員さん達の中であるのでしょうか?

遠藤:通常からはわからないけどまぁ、しきりにフェンス沿いを歩くとか、フクに対しておしりを向けるとか、あと分泌液とかですかね。
2月のペアリングに関してはマルがフェンスに立ち上がって、いつもよりアグレッシブにフクに対して「行きたい」というような感じに見られたので実施しました。
発情の確証は得れてないですけど…行きたいというサインが普段より強かったという…フクに対して…ぼやっとした感じですけど。

高岡:ウォンバット同士で多分オスがメスの陰部の匂いとか排泄物なんかで発情ホルモンを嗅ぎ取ってるんだと思うんですけど、それで多分おそらく発情のピークとか、
ウォンバット同士では情報交換できてると思うんですけど、僕らで発情の兆候を見るというとオスの前をうろつくとか、先ほど遠藤が言ったようなこととか、
そういうようなことしかちょっとわかんないですね。
次もうまくディープにミックスできるような形がやはりベストなので、そこ目指してちょっと日々の観察をしていってるかたちですね。

―――やはりプロの皆さんをもってしても、タイミングなんかも含めて、凄く難しいことをされているということですよね。

遠藤:まぁワイン・ワンダーほど大人しくないというのがあって、追いかけまわすのは確実なので…。
何もないときに追いかけまわしてもストレスやケガの原因にもなるから、中々慎重にという部分もあるかもですね。

―――有袋類の交尾は命がけとは聞きますしね。

―――では最後に瀬島さんからウォンバットファンの皆さんにメッセージをお願いします。

瀬島:新しいウォンバットもやってきて賑やかになってきた動物園なので、ウォンバットファンの皆さん全国から来て
もらって、みんなの個性的な姿を見ていただければと思いますんで、ぜひお越しください。

―――ありがとうございました。